年金の強制はおかしい?大損?【社会保険労務士が徹底解説】

年金の強制はおかしい?大損?

本記事で紹介する内容
1.年金を「滞納」するとどうなる?
2.年金を払った方がいい「3つの理由」
3.大黒柱死亡時等にもらえる「年金」
4.「労災」と年金は同時受給できる?
5.子供が成長したパートさんは、
「扶養から外れた方がいい理由」

平成30年度から、国民年金保険料の滞納者のうち、強制徴収する対象者の範囲が、

  • 年間所得:300万円以上
  • 滞納期間:7か月以上

に拡大されました。

「将来もらえる保証がないのに、
年金保険料の強制徴収はおかしい!」

と年金保険料を支払わずにいると、どうなるでしょうか?

1.年金保険料の「支払いを滞納」
しているとどうなる?

年金保険料の「支払いを滞納」しているとどうなる?
日本国内に住んでいる人は20歳になると国民年金に加入し、年金保険料を支払わなければなりません。

年金保険料を支払わずにいると、

  1. 「最終催告状」が送付される
  2. それでも支払わない場合
    「督促状」が送付される
  3. 督促状の指定期限までに支払わないと
    「延滞金」が課される
    ・滞納者、世帯主、配偶者の
    「財産が差押えられる」

平成29年4月~平成30年3月分の
「強制徴収の実施状況」
以下のとおりです。

  • 「最終催告状」の送付  103,614件
  • 「督促状」の送付    66,270件
  • 「財産」の差押え    14,344件

「最終催告状」が送付された人の
「約7人に1人」が、
財産を差し押さえられています。

出典:日本年金機構ホームページ
「国民年金保険料強制徴収集中取組期間」
の結果について

2.年金保険料を払った方がいい
「3つの理由」

年金保険料を払った方がいい「3つの理由」
年金保険料を払うべき「3つの理由」を解説します。

  1. 「10年以上」保険料を払わないと
    「老齢基礎年金」がもらえなくなる
  2. 「支払わない」ことで
    「将来もらえる年金額」が減少する
  3. 「障害基礎年金」「遺族基礎年金」
    がもらえなくなる

【理由1】「10年以上」保険料を払わないと、
「老齢基礎年金」がもらえなくなる

(1)65歳から
「老齢基礎年金」をもらえる人

  • [保険料納付済期間] +[保険料免除期間] 10年(120カ月)

継続して保険料を納付している方は、
65歳から「老齢基礎年金」を受給できます。

(2)「10年未満」でも65歳から
「老齢基礎年金」をもらえる人

  • [保険料納付済期間] +[保険料免除期間] +[合算対象期間] ≧10年(120カ月)

支払っている場合、65歳から
「老齢基礎年金」を受給できます。

(3)65歳から
「老齢厚生年金」をもらえる人

厚生年金に加入していたことがあり、65歳から老齢基礎年金がもらえる人は「老齢厚生年金」が受給できます。

(例)「大卒(22歳)で入社」した人の場合

  1. 大学を卒業するまで、
    親が国民年金の保険料を払っていた
  2. 大学卒業後、
    厚生年金保険料を支払っていた
  3. 5年間勤務した後、退職
  4. 退職後、転職せず60歳まで
    国民年金の保険料を滞納した

この場合「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」ともにもらえず「5年分の厚生年金保険料が掛け捨て」になってしまいます。

「失業してどうしても払えない」
「授業料が高く、年金保険料を払えない」

という場合は、

  • 保険料の免除・納付猶予
  • 学生納付特例

の手続きをします。

免除や猶予の条件を満たせば、猶予された期間も年金の受給資格期間に参入されます。

【理由2】「将来もらえる年金額が減少」する

年金保険料を支払っていない期間があると、将来もらえる年金額が少なくなります。

(1)「20歳~60歳まで
保険料を支払った人」の年金額

20歳~60歳まで「40年間(480月)」
国民年金保険料を支払った場合、

  • 満額の老齢基礎年金
    (平成30年度の年金額は779,300円

を65歳から受給できます。

(2)「保険料免除や
滞納月がある人」の年金額

老齢基礎年金の平成30年度の年金額は、
下記の計算式による額となります。

  • 779,300円
    ×(保険料納付済月数
    [全額免除月数]×[4/8] [1/4納付月数]×[5/8] [半額納付月数]×[6/8] [3/4納付月数]×[7/8]
    /(40年[加入可能年数]×12月)

保険料の「滞納月数」「免除月数」が多いほど、将来もらえる年金額が少なくなります。

【理由3】「障害基礎年金」
「遺族基礎年金」がもらえなくなる

国民年金は、65歳からもらえる「老齢年金」だけではありません。

  • 病気やケガで仕事ができない
    または、介助必要時に受給できる
    「障害基礎年金」
  • 一家の大黒柱が亡くなった時に、
    遺族が受給できる「遺族基礎年金」

これらの年金は、要件に該当すれば20代でも受給できます。

3.65歳からだけじゃない、
がんになった時や一家の大黒柱が
亡くなった時にもらえる年金

国民年金には「老齢基礎年金」だけでなく

  1. 「障害基礎年金」
  2. 「遺族基礎年金」

もあります。

(1)「障害基礎年金」

  • ケガで「障害」が残った場合
  • 「がん」や「糖尿病」などの病気で
    「介助」が必要となった場合

「障害基礎年金」がもらえます。

1.「障害基礎年金」をもらえる人

  • 「国民年金」加入期間に、
    「病気」や「ケガ」の診断を受けた
  • 「障害認定基準」にある
    保険料納付要件

以上を満たした場合、
「障害基礎年金」を受給できます。

2.「障害基礎年金」の
保険料納付要件

  • 初診日の月の前々月までの
    加入期間の2/3以上保険料
    納付、または免除されている
  • 初診日の時、65歳未満で、
    初診日の月の前々月まで
    1年間に保険料を滞納していない

いずれかを満たしている場合、受給できます。

3.「障害基礎年金額」
(平成30年度の年金額)

  • 1級 7,793,000円×1.25※子の加算
  • 2級 7,793,000円+※子の加算
    ※子の加算:
    第1・2子:224,300円

    3子以降:各74,800円

がそれぞれもらえます。

(2)「遺族基礎年金」

一家の大黒柱が亡くなった時、

  • 「子供がいる配偶者」
  • 配偶者がいない場合は「子供」

のいずれかが「遺族基礎年金」を受給できます。

1.「遺族基礎年金」
の保険料納付要件

  • 被保険者、または老齢基礎年金の
    受給資格期間が25年間以上の人が
    亡くなった時
  • 平成38年4月1日以前の場合、
    死亡日が65歳未満で死亡日の月の
    前々月までの1年間に
    保険料を滞納していない

のいずれかの要件を満たした場合、受給できます。

2.「遺族基礎年金額」
(平成30年度の年金額)

7,793,000円+※子の加算
※子の加算

・第1・2子:224,300円
・3子以降:各74,800円

受給できます。

※18歳になった年度の3月31日
を経過していない子、または
20歳未満で障害等級1級か2級の子

保険料を滞納していると、いざという時に「障害基礎年金」「遺族基礎年金」をもらえなくなるかもしれません。

「障害基礎年金の認定基準」については、日本年金機構ホームページをご参照ください。

出典:日本年金機構ホームページ
国民年金・厚生年金保険障害認定基準

4.「労災保険」をもらっていても、
「年金」は受給できる?

「労災保険」をもらっていても、 「年金」は受給できる?

  • 「仕事中のケガ」
    「過重労働」による脳梗塞
  • 職場でパワハラを受け、
    「うつ病」と診断された人

など、労災保険の

「障害(補償)年金」
「遺族(補償)年金」

をもらっている場合でも

  • 「障害基礎年金・障害厚生年金」
  • 「遺族基礎年金・遺族厚生年金」

を受給できます。

この場合、労災保険給付の

「障害(補償)年金」
「遺族(補償)年金」

が減額されます。

(例)労災保険の「障害(補償)年金」と
「障害基礎年金」「障害厚生年金」を
もらう場合

障害(補償)年金×[0.73] +障害基礎年金・障害厚生年金

(例外)
障害厚生年金を受給している人が、
労災保険の遺族補償年金を受給する時、
遺族補償年金は減額されません。

「労災保険給付の減額率」は、厚生労働省のホームページでご確認ください。

出典:厚生労働省ホームページ
「労災保険に関するQ&A」

5.子供が成長したパートさんは
「扶養から外れた方がいい理由」

「健康保険」「厚生年金」の加入社員が
「501人以上」の会社では、

  1. 「週20時間以上」勤務している
  2. 「月額収入が88,000円以上」
    (年収106万円以上)
  3. 「勤務期間1年以上」の見込み
  4. 「学生」は除く

以上のすべて満たす社員は、「健康保険」「厚生年金」に加入しなければなりません。

平成31年10月から500人以下の会社でも、この条件が適用される可能性があります。

適用されると「夫の扶養から外れたくない」場合「年収を106万円未満に抑える」必要があります。

「年金が779,300円では少ない」という人は、働き方を見直し、将来もらえる年金額を増やしましょう。

まとめ(年金を滞納すると、
いざというときにお金がもらえなくなる)

年金を滞納すると、 いざというときにお金がもらえなくなる

国民年金には65歳から受給できる

「老齢基礎年金」

だけでなく、要件を満たせば

「障害基礎年金」
「遺族基礎」

も受給できます。

しかし、滞納期間があると

「老齢基礎年金」
「障害基礎年金」
「遺族基礎年金」

を受給できなくなる場合があります。

経済的に苦しくて保険料を払えない場合は、滞納のまま放置せず、

「保険料免除・納付猶予の手続き」

をすることで制度を最大限活用しましょう。

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